「心理学研究」に論文が掲載されました
「心理学研究」に、以下の論文が掲載されました。
玉井颯一・五十嵐祐 (2019). 刑罰としての排斥の容認――功利主義的な根拠の正当化効果―― 心理学研究
和文要約
集団から特定の個人を追放する排斥は,厳しい社会統制とみなされながらも,制度的制裁として広く是認されている。本研究では,制裁を正当化するための根拠として,(a) 制裁を多くの人々が利益を得るための手段とみなす功利主義,(b) 制裁を過去の罪への罰とみなす応報主義,(c) 制裁を違反者に道徳を教育するための罰とみなす道徳教育論に着目し,シナリオ実験によって,排斥の行使が制度的制度として支持される際の心理的メカニズムを検討した。その結果,功利主義的な根拠による排斥は,他の2つの根拠よりも支持されやすく,功利主義的な根拠による排斥への選好が他者一般の支持度による影響を受けにくいことが明らかとなった。本研究の結果は,排斥によって特定の個人を孤立させることが,逸脱行為に対する罰としてではなく,多数派の利益を増進させるために支持されていることを示唆するものである。