「実験社会心理学研究」に論文が掲載されました
「実験社会心理学研究」に、以下の論文が掲載されました。
原田 瑞穂・五十嵐 祐 (2025). 間接互恵性における集団サイズの影響 実験社会心理学研究. https://doi.org/10.2130/jjesp.2420
間接互恵性は,利他行動を通して行為者の肯定的な評判が形成されることで,第三者から資源が返報されるというメカニズムのもとで検討されてきた。しかし,すべての第三者が利他行動を肯定的に評価するとは限らない。特に,集団サイズが増加すると,人々は第三者からの評価に対してより敏感になる一方で,第三者から返報を受けることへの期待を低く見積もる可能性がある。本研究では,第三者の人数と利他行動との関連について,評価への関心と間接的な利益に対する期待による影響を考慮した実験室実験(N=111)を行った。参加者は,架空のNPO法人に寄付を行った後,所定の人数(1人,5人,9人)から無作為に選ばれた架空の参加者1人との間で,信頼ゲームを行った。このとき,架空の参加者は参加者の寄付額を知った上で資源を提供すると教示した。実験の結果,評価への関心,間接的な利益に対する期待,寄付額のいずれも,条件間で有意な差がみられなかった。ただし,第三者の人数が増加するにつれて,評価への関心が寄付行動を抑制させる効果を高める傾向がみられた。本研究の結果は,人々が自身の行動を評価する人物の人数によって自身の評価に対する関心を変化させ,利他行動を調節する可能性を示唆する。