「心理学研究」への論文掲載が決定しました
「心理学研究」に、以下の論文が掲載される予定です。
浅野良輔・五十嵐祐 (印刷中). 精神的健康・幸福度をめぐる新たな二者関係理論とその実証方法 心理学研究
和文要約
二者関係は個人の精神的健康や幸福度の源泉となる。これまでの研究では,精神的健康や幸福度の説明変数として,特性自尊心や愛着スタイルといった個人レベルの説明変数が主に注目されてきたが,二者関係のなかで共有され創発された概念については,ほとんど検討されていない。
本論文の目的は,個人の精神的健康や幸福度を“個人―関係のダイナミックス”によって説明する新しいアプローチを導入し,そのためのダイアドデータの分析について議論することである。本論文では,社会認知理論や社会関係資本論に関する体系的なレビューを踏まえ,個人レベルとダイアドレベルという二つの影響プロセスに注目し,個人一人ひとりの効力期待である“知覚された関係効力性”とは異なる,二者間で共有された効力期待である“共有された関係効力性”を取り上げる。
本論文では,共有された現実感との関連,自己効力感との違い,マルチレベル構造方程式モデリングの適用といった理論と分析の観点から,共有された関係効力性や知覚された関係効力性の性質について議論する。共有された関係効力性をはじめとした“個人―関係のダイナミックス”のアプローチを支持するこれまでの実証研究を概観するとともに,二者関係についての心理学的検討の意義や今後の方向性について述べる。